めまいとは
何らかの原因によって身体のバランスが取りにくくなって、足元がおぼつかない、あるいは目がグルグル回るなどの状態が現れているのをめまいといいます。
めまいは、大きく前庭性と非前庭性に分類されます。
この前庭とは、内耳の中に含まれるもので、身体の揺れや傾きを感じとったり、身体の平衡バランスを維持したりする働きがあります。
この前庭性に異常がみられるめまいを前庭性めまいといい、さらに末梢性と中枢性に分類されます。
なお末梢性とは、内耳あるいは前庭神経に異常があることで発症するめまいのことをいいます。
また中枢性は、脳の部位で何らかの異常(脳血管障害 等)があって起きるめまいのことで、生命に影響しやすいとされているものです。
耳鼻咽喉科で診療するめまいとは、主に末梢性の前庭性めまいになります。
中枢性であれば、脳神経外科などでの対応となります。
ちなみにめまいの状態とはひとつではなく、目がグルグル回るようなめまいは回転性めまいと呼ばれ、ふわふわするような感覚であったり、足元がふらついたりといった状態にあるめまいは、動揺性・浮動性めまいといいます。
なお目がグルグル回るようなめまいがある場合、多くは末梢性のめまいと考えられますが、ただ動揺性・浮動性めまいであっても末梢性である可能性はあります。
そのほかにも、末梢性では耳鳴りや難聴はあるが、中枢性ではごくまれとされていたり、神経症状があるのは中枢性、ないのが末梢性などの特徴があったりします。
いずれにしても、一般的に中枢性か末梢性かを見分けるのは簡単ではないので、どちらか区別できないという場合も遠慮なくご受診ください。
このほか、前庭に異常がなくても起きるめまいもあります。
これは非前庭性めまいと呼ばれるものですが、原因としては、循環器疾患(不整脈 等)、貧血、精神科疾患、自律神経失調症、更年期障害などが挙げられます。
末梢性めまいの代表的疾患
良性発作性頭位めまい症
一時的に起こるとされる回転性めまいや眼振(眼球がけいれんしているかのように揺れる、あるいは動いている状態)が特徴的とされています。
めまいの病気の中では、最も患者数が多いといわれるものです。
この良性発作性頭位めまい症は、寝返りを打つ、美容院等で洗髪をしてもらうなどの際、頭を特定の位置に動かすことで、グルグル目が回るような強い回転性めまいが30秒程度続き、その後は徐々に治まっていき、やがて症状は治まっていきます。
原因については特定されていませんが、内耳の中には耳石器という、身体の平衡感覚を司る器官があります。
その中には耳石が収まっているのですが、何らかの原因によって耳石が半規管内に入ってしまうことで、めまいなどの症状が起きるようになるのではないかといわれています。
なお、めまいや眼振以外の症状、難聴や耳鳴り、神経症状などが起きることはありません。
診断をつけるにあたって、問診や身体診察のほか、眼振を確認するための検査(頭位眼振検査 等)を行います。
また、ほかの疾患と鑑別するため、聴力検査や画像検査(頭部CT、頭部MRI 等)を実施することもあります。
治療について
特効薬というものはなく、めまいの症状に対してめまいを抑制する薬を使用することもあるが、この場合は補助的な使用となります。
また理学療法として、半規管内にある耳石を元にあった卵形嚢という場所に戻していく浮遊耳石置換法(エブリー法 等)を行うこともあります。
メニエール病
内耳にリンパ液が何らかの原因によって溜まってしまい、それによって激しいめまいなどの症状が現れている状態をメニエール病といいます。
30~50代の女性や几帳面な性格の方などが発症しやすいとされています。
同疾患は、ストレス、過労、睡眠不足などがきっかけとなって起きるのではないかといわれています。
これらによって、内リンパ液の生産が過剰になったり、吸収障害がみられたりして内リンパ水腫(水ぶくれの状態になる)が発生し、内リンパ圧が上昇するなどすることで、回転性めまいや耳鳴り、難聴、耳が詰まった感覚(耳閉塞感)等の症状が現れるようになります。
診断をつけるにあたっては、純音聴力検査でめまいや難聴の程度を確認するほか、平衡機能検査で身体のバランス感覚を評価するなどします。さらに別の疾患と鑑別するための検査として頭部MRIなどの画像検査を行うこともあります。
治療について
現時点で完治する治療法は確立していません。
めまいの症状が強く出ているときは、抗めまい薬や内耳循環改善薬などを用います。
また吐き気があれば制吐薬、難聴を改善させたい場合はステロイド薬などを使用するなど薬物療法が中心となります。
発作が治まっている間(間欠期)は、めまいの予防対策を行います。
内容としては、生活習慣の見直し(睡眠不足の解消、ストレスを溜めない、過労にならないための環境づくり 等)によるリスク要因の除去、内リンパ水腫を軽減させるための薬物療法(浸透圧利尿薬、内耳循環改善薬、ビタミンB12 等)、中耳加圧療法などです。
これらの治療を行っても、めまいを繰り返す、効果がみられないという場合は、手術療法が検討されます。
前庭神経炎
内耳には、身体の平衡感覚を感じとる「前庭」と呼ばれる器官があります。
そのバランスの状態を脳に情報として伝える役割をするのが前庭神経といいます。
同神経がウイルスに感染することで炎症を起こしている状態にあるのが前庭神経炎です。
同疾患を発症すると、何の前触れもなく激しい回転性めまいのほか、吐き気や嘔吐がみられることもあります。
数日後も回転性めまいは続くことになりますが、日が経つにつれて減衰していきます。
なお回転性めまいについては、多くは1ヵ月以内で消失するようになりますが、ふらつくなどの平衡障害は数ヵ月程度続くこともあります。
なお前庭神経炎では発症前に風邪の症状(鼻水・鼻づまり、咳、喉の痛み、発熱 等)を訴える患者様もいます。
診断をつける際に行う検査としては、眼振検査(めまいの原因等を確認)、平衡機能検査(身体に偏り等がないかを調べる)などが行われます。
治療について
回転性の激しいめまいがある状態であれば、まずは安静にします。
そのうえで、薬物療法も用います。
具体的には、めまいを抑制する場合は炭酸水素ナトリウム、嘔吐があれば制吐薬、炎症抑制にステロイド薬などが使われます。
症状が落ち着くようになったら、ふらつきなどを改善するためのリハビリテーションを行うことも大切です。