のどの病気とは

一般的にのど(喉)と呼ばれる部分は、口唇(くちびる)から口の中(口腔)をはじめ、口の奥から食道あるいは気管へとつながる部分にあたる咽頭、さらに咽頭の真下にあって気管の入口につながる喉頭までの範囲をいいます。
これらの器官がしっかり連携することで、呼吸、嚥下、発声、摂取(咀嚼)などがスムーズとなります。

ただ感染症(ウイルス、細菌 等)に感染する、物理的な刺激が繰り返される(大声を出す、喫煙による喉の粘膜の刺激 等)、アレルギー反応を引き起こす、腫瘍が発生する、加齢による嚥下機能等が低下するといったことなどがのどで起きれば、これらの連携には不具合が生じるなどして、様々な症状や病気がみられるようになります。

以下のような症状に心当たりがあれば、一度当院をご受診ください。

  • のどに痛みや違和感がある
  • 食べ物が飲み込みにくくなった、のどにつかえる感覚がある
  • 声がかすれている
  • のどに腫れやしこりが気になる
  • 咳が長引いている、痰が出ている
  • 呼吸がしにくい、息苦しい
  • のどに異物感やヒリヒリした感触がある など

主なのどの病気

急性扁桃炎

のどの奥の左右にある口蓋扁桃と呼ばれる部位に急性的な炎症が起きている状態を急性扁桃炎といいます。

主に細菌やウイルス等の病原体に感染することで炎症が起きるようになります。
この急性扁桃炎は、小児~成人まで幅広くみられますが、なかでも5歳以下の乳幼児に発症しやすい病気でもあります。

よくみられる症状は、のどの痛み、嚥下痛、発熱、全身の倦怠感などです。
また子どもの場合、激しいのどの痛みから水分等をとることができずに脱水症状を引き起こしてしまうこともあります。

医師による視診で扁桃の腫れを確認したところで診断がつくことが大半ですが、血液検査や細菌検査(原因とされる細菌の種類を調べる)を行うこともあります。
適切な治療を行わないと、喉頭浮腫や膿瘍形成等の重篤な病状へと移行する可能性があります。

治療について

ウイルスが原因であったり、症状が軽度であったりすれば、対症療法として消炎鎮痛薬(NSAIDs、アセトアミノフェン)が用いられます。
また細菌が原因、症状が中等症以上であれば、抗菌薬を投与していきます。

咽頭炎

鼻の奥から食道の入り口にかけての範囲を咽頭といいます。
この範囲というのは、空気や食物などの通り道でもあるのですが、この部分において炎症が起きている状態を咽頭炎といいます。

なお一口に咽頭炎といいましても、急性咽頭炎、慢性咽頭炎、咽頭特殊感染症の3つに分類されます。
急性咽頭炎は、細菌やウイルス等の病原体の感染によって引き起こされた咽頭の炎症のことをいいます。
また慢性咽頭炎は、咽頭炎による症状が3週間以上経過している状態で、急性疾患が治りきらない、喫煙によるたばこの煙やお酒などによる慢性的な咽頭粘膜の刺激などが原因となります。
このほか、咽頭特殊感染は、特殊な病原体が原因で咽頭炎が引き起こされている状態をいいます。
原因となる病原体は、クラミジア、梅毒トレポネーマ、結核菌などが挙げられます。

よくみられる症状ですが、急性咽頭炎では、のどの痛みをはじめ、頭痛、発熱、全身の倦怠感などが現れるようになります。
慢性咽頭炎では、咽頭に不快感があったり、異物感を覚えたりといった症状がみられやすく、咳払いも起きやすくなります。
また咽頭特殊感染は、上記の急性、あるいは慢性の咽頭炎と同様の症状がみられるようになります。

咽頭炎は、問診や視診によって診断がつくことが多いですが、必要であれば細菌検査や血液検査を行うこともあります。

治療について

発症の原因が、ウイルスか細菌かによって異なります。
細菌については、主に抗菌薬(ペニシリン系 等)を使用します。
ウイルスの場合は、対症療法が中心となります。
この場合、熱や痛みがあれば解熱鎮痛薬を使用します。
また安静にする、水分を摂取する、のどを保湿するといったことに努めるのも大切です。

喉頭炎

喉頭とは、喉頭蓋付近から輪状軟骨(気管の入口付近)までの範囲をいいます。
そもそも喉頭は、呼吸、発声、嚥下(飲み込む)に携わるなど重要な器官でもあるわけですが、この部位の粘膜に炎症が起きている状態にあるのが喉頭炎です。

この喉頭炎につきましても、急性喉頭炎と慢性喉頭炎があります。
急性喉頭炎は、ウイルスや細菌等の病原体に感染して発症することもあれば、声を出しすぎる、アレルギー反応、たばこの煙などの吸入といったことが原因として挙げられます。
また慢性喉頭炎は、急性喉頭炎の繰り返しもあれば、副鼻腔炎による後鼻漏、上気道や下気道からの炎症の広がりといったことで引き起こされます。

主な症状は、のどの痛みや違和感、声がれ(嗄声)、乾いた咳などがみられるようになります。

問診や視診のほか、喉頭鏡検査、喉頭ファイバースコープを用いるなどして、咽頭や喉頭の状態を観察するなどして診断をつけていきます。

治療について

急性喉頭炎の場合ですが、ウイルス感染によるおのであれば対症療法として解熱鎮痛薬などが用いられます。
また細菌感染が疑われる場合は抗菌薬(ペニシリン系 等)が投与されることがあります。

慢性喉頭炎の治療に関しては、原因疾患があればその治療を優先的に行うほか、必要であれば生活環境の改善にも努めていきます。

悪性腫瘍

咽頭がん

咽頭に発生するがんを総称した名称ですが、発生部位によって上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんに分類されます。

上咽頭がん

上咽頭とは、鼻の奥にある一番上の咽頭部分から口蓋垂(のどちんこ)の裏部分までの範囲をいい、ここに発生したがんが上咽頭がんになります。
日本ではまれながんとされ、中国南部や東南アジアでよくみられ、30歳以下の若年層と50代以降の男性で発症しやすいとされています。
発症にはEBウイルスが関係しているとされています。
主な症状は、耳閉塞感、鼻づまり、鼻血、難聴等で、ある程度進行すると、物が二重に見える(複視)、顔の感覚障害、頸部リンパ節の腫れなども見受けられるようになります。

中咽頭がん

中咽頭は口の奥にある口蓋垂付近から舌の付け根付近あたりのことをいいます。
この範囲に発生するがんを中咽頭がんといいます。
発症の原因としては、HPV(ヒトパピローマウイルス)の感染のケースもあれば、飲酒や喫煙が引き金になることもあります。
主な症状ですが、初期症状としては食物などを飲み込む際の違和感、のどがしみる感覚などがあります。
病状が進行すると、話しにくい等の構音障害、むせる、飲み込みにくい等の嚥下障害、頸部リンパ節の腫れなどもみられるようになります。

下咽頭がん

舌根の下方から気管へとつながる部分までの範囲を下咽頭といいます。
その付近に発生するがんを下咽頭がんといい、喫煙は多量な飲酒がリスク因子として挙げられ、50代以上の男性が発症しやすいといわれています。
また上記以外にも慢性の鉄欠乏性貧血がみられる女性に発症することもあります。

発症初期は自覚症状が出にくいとされますが、そのうち飲み込み時の違和感、のどがしみるなどの症状がみられ、進行期になると、血痰(のどから出血)、嗄声(声がかれる)などの症状が現れます。

喉頭がん

喉頭(こうとう)は、のど仏があるあたりにある、声帯や気管への入り口がある部分です。食べ物が気管に入らないようにする蓋(喉頭蓋)や、声を出したりするために大切な器官です。
喉頭がんとは、この喉頭にできる「がん」のことです。がんができる場所によって、「声門がん」「声門上部がん」「声門下部がん」の3つに分けられます。

喉頭がんは、頭や首にできるがん(頭頸部がん)の一つで、ほとんどが「扁平上皮がん」という種類のがんです。喫煙される方に多く見られます。

症状は、がんができる場所によって少しずつ異なります。

喉頭がんの診断は、主に以下の検査で行われます。

  1. 内視鏡検査(喉頭ファイバー): 鼻や口から細いカメラを入れて、喉頭の様子を直接観察します。声帯の動きや、がんの有無、広がりなどを詳しく調べます。
  2. 生検(せいけん): がんが疑われる部分の組織を少し採取し、顕微鏡で詳しく調べてがん細胞の有無を確認します。この検査で確定診断がなされます。
  3. 画像検査(CT、MRI、PET-CTなど): がんの大きさや深さ、周りの組織への広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無などを調べるために行われます。

治療については、専門病院にご紹介いたします。
専門施設で患者さんご本人やご家族と十分に話し合いながら、最善の方法を一緒に考えていくことになります。