首の病気とは

耳鼻咽喉科では、耳、鼻、口(のど)に関する病気や症状だけでなく、首に関係した症状や病気につきましても診療対象となっています。
首には、唾液腺、リンパ節、甲状腺、気管、頸動脈など大事な器官や血管がありますが、そのなかでも、唾液腺、リンパ節、甲状腺等については、耳鼻咽喉科でも診療対象となっています。

首が腫れている、しこりのようなものを感じているなどの症状を感じる場合も遠慮なく、当院をご受診ください。

以下の症状に心当たりのある方は、一度当院をご受診ください。

  • 首に痛みや違和感がある
  • 首のしこりや腫れが気になって仕方がない
  • 声がかすれている(嗄声)
  • のどに圧迫感がある、食物等が飲み込みにくい
  • 首の腫れだけでなく、発熱や全身の倦怠感がある 等

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

一般的には、おたふくかぜと呼ばれ、小児(主に幼児や小学校低学年の児童)に発症しやすい感染症として知られています。
発症の原因でもあるムンプスウイルスに飛沫もしくは接触感染といった感染経路で感染し、2週間程度の潜伏期間を経てから発症するようになります。

主な症状は、発熱、耳下腺(耳の前下方に位置:産生・分泌する器官)の腫脹や痛みといったものです。
耳下腺腫脹については、両側の耳下腺でみられることもあれば、片側のみの場合もあります。
また顎下腺や舌下腺で腫脹がみられることもあります。
腫脹については、一週間から10日程度続くようになります。

なお小児では、流行性耳下腺炎に感染しても発症しない不顕性感染のケースが3分の1程度あるといわれています。
ただ成人になって感染した場合は、不顕性感染になることは少なく、重症化しやすいといったことがあります。

また流行性耳下腺炎は合併症を引き起こすこともあり、約10人に1人の割合で無菌性髄膜炎を発症するといわれています。
また、まれなケースとして、難聴や膵炎を起こすこともあり、成人で発症した場合は、卵巣炎(女性)や精巣炎(男性)を併発することもあります。

治療について

原因ウイルスに対する特効薬はないので、対症療法が中心となります。
具体的には、熱や痛みを緩和させるために解熱鎮痛薬を使うなどしていきます。

なお小児の任意接種(全額自己負担)とはなりますが、おたふくかぜを予防するワクチンもあります。
同ワクチンを接種することで、発症や重症化のリスクを低減させることにもなるので、できるだけ受けられることをお勧めします。

唾液腺腫瘍

唾液腺(大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)、小唾液腺)に発症する腫瘍のことを唾液腺腫瘍といいます。
同腫瘍の8割程度が耳下腺に発生するとされ、1割程度が顎下腺、舌下腺や小唾液腺はまれとされています。
発症の原因については現時点で解明されていませんが、悪性腫瘍の割合については、耳下腺は約2割、顎下腺は約4割、舌下腺・小唾液腺では約8割となっています。

良性と悪性の比較についてですが、良性では痛みや神経症状がみられることはなく、周囲の組織との癒着は、ほぼありません。一方、悪性の場合は疼痛や神経症状がみられ、周囲組織との癒着もみられます。

なお耳下腺腫瘍であれば、良性なら症状が出にくいので自覚しにくく、腫瘤はあっても痛みを感じないしこりというのが大半です。
ただ悪性では、疼痛を感じるほか、顔面神経が麻痺するので、口の両端が下がってしまうといったことなどがあります。

診断をつけるにあたっては、CT、MRI、超音波検査による画像検査で腫瘤の有無や状態などを調べていきます。
また良性か悪性かを調べるために腫瘍の部分に針を刺し、採取した細胞を顕微鏡で観察する細胞診を行うこともあります。

治療について

良性でも悪性でも手術療法によって腫瘍を取り除くことが基本となります。
良性腫瘍の中では多形腺腫と呼ばれるタイプが最も多い(全体の過半数を超える)のですが、悪性に転化する可能性もあるので、早期に摘出する必要があるとされています。

唾石症

唾液成分が固まってできた石のような塊を唾石といいます。
この唾石が唾液腺等に詰まるなどして、狭窄あるいは閉塞し、それによって様々な症状がみられるようになります。
発症の大半は、顎下腺で起きるとされていますが、耳下腺で全体の1割程度、舌下腺も可能性としては少ないですがあるとしています。
なお唾石が作られる原因というのは、現時点で明らかになっていません。

よくみられる症状としては、食事中に顎の下あたりが激しい痛みに見舞われ、唾液腺(多くは顎下腺)に腫脹がみられるようになります。
また唾石による狭窄や閉塞によって、細菌が繁殖しやすくなるなどして感染症を招きやすくなるので、放置を続ければさらに症状を悪化させるようになります。

明らかに唾石症と判明できる症状がみられると問診や診察で診断がつくこともありますが、診断を確定させるために頭部CT検査を行うこともあります。

治療について

唾液腺で腫れや痛みを繰り返している場合は、手術療法が検討されます。
唾液の排出管の出口付近にあれば、唾石のみを取り除きます。
また顎下腺の中に唾石があれば、顎下腺も含めて摘出していきます。

なお炎症や痛みを抑える治療としては、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を用います。
また感染もみられるという場合は、抗菌薬を投与していきます。

甲状腺腫瘍

甲状腺は、のどぼとけの真下に位置し、蝶が羽を広げたような形をした臓器になります。
甲状腺ホルモンを生成・分泌する器官で、縦が約4cm、横幅は3cm程度、重さは20gほどの大きさですが、体内にあるホルモン分泌器官では最大とされています。

甲状腺ホルモンは主にヨウ素を原料として作られますが、同ホルモンが血液の流れに乗って、全身へと分泌されると、新陳代謝を調整したり、子どもの成長や発達を促したりする働きをするようになります。

この部位に腫瘤がみられる状態を総称して甲状腺腫瘍といいます。
腫瘍は大きく、良性と悪性に分類され、良性には、甲状腺腫(単純性、腺腫様)、プランマー病などがあります。
また悪性の種類としては、甲状腺がんや悪性リンパ腫などがあります。
なお発症の原因については、良性、悪性ともに特定しておりません。

主な症状ですが、良性であれば、甲状腺に腫れがみられたり、甲状腺ホルモンの過剰分泌による症状(甲状腺機能亢進症:動悸・息切れ、体重減少、手の震え、異常な発汗 等)が現れたりします。
また悪性では、飲み込みにくい、声がかれる(嗄声)、首のしこり、呼吸困難、血痰などがみられるようになります。
ただ、これらの症状だけで、良性や悪性を判断するのは早計なので、異常に気づいたら医療機関を速やかにご受診されるようにしてください。

診断をつけるにあたっては、視診や触診を行うほか、甲状腺超音波検査(甲状腺エコー)で腫瘍の有無をはじめ、腫瘤の大きさや形状、血流やリンパ節の腫れなどを調べます。
そのほかには、甲状腺ホルモンの数値を調べる血液検査、甲状腺に発生した腫瘤に向けて針を刺し、採取した細胞を顕微鏡で調べ、良性か悪性かを調べる細胞診などの検査なども行います。

治療について

良性の腫瘍で、これといった症状もない場合は、経過観察となります。
なお良性腫瘍でも圧迫感があるなどの症状がみられる、甲状腺がんと診断を受けたという場合は、手術による外科的治療で甲状腺の一部の切除、もしくは全てを摘出していきます。

このほか、ホルモン異常(分泌過剰、分泌不足 等)があれば、抗甲状腺薬や甲状腺ホルモン薬などの薬物療法を行うこともあります。